今更思い出したってしょうがない。
何度そう思ったってこの想いは消えてくれない。
あの頃、いつ咲くかな、なんて楽しみに待っていた桜の木は、もう葉が生い茂っていて、次の春の準備を始めている。
花ですら次へと進もうとしているのに、私ときたら。
水たまりに映る私は私のようで、私ではない何かに見えた。
「あなたは本当に私なの?」
呟いてみるけれど返事はない。
一人で抱え込むなんて私らしくない。
私自身もそう思う。
君が隣にいてくれた頃の私と、水たまりの中の私。
別人みたいだ。
いや、実際そうなのかもしれない。
昨日見たアニメで泣いたこと
いつもよりTwitterにいいねが多かったこと
前髪がいい感じに切れたこと
スマホケースを変えたこと
君の寝息が愛しかったこと
今はいいことしか思い出せないけれど、きっと嫌なこともたくさん君に話してたんだ。
だから私は、抱え込んでるって、思わなくてすんでたんだ。
本当に今更だなあ。
気づけば雲の切れ間から陽が差していて、水たまりの中の私も少しだけキラキラと輝いて見えた。
こんな顔でいてはきっと紫陽花にすら笑われてしまうや。
日焼け止めを塗り忘れていたことに気づく。
今更だなあ、と数分前と同じようなことを思いながら、シャツの袖をまくり、私は歩き出した。
著 たかみ #journeyclue_story
https://youtu.be/Z6qaP3qdEN8
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